恋に狂う。仕事に悩む。これぜんぶ、能の話です。

能・狂言・歌舞伎

日本の伝統芸能である「能」をご存知でしょうか。
その存在を知っていても、「難しそう」「よくわからない」と感じている方は少なくありません。
能は、人の心の葛藤や、人生に起こる出来事を描いています。時代背景は違っても、恋に悩む女性がいたり、仕事や人生に悩む青年がいたりと、現代のドラマと根本は一緒。
時代を超えて共感できる、人間の普遍性を描いた古来の演劇なのです。
ここでは能とはなにか、またその面白さや楽しみ方をまとめました。
初めての方でも楽しめる公演のご案内もありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

観世清和×コシノジュンコ 能+ファッション “継承される伝統と現代の融合”
公演日|2020年11月9日(月)昼の部13:00〜
  夜の部17:00〜

チケット販売

ページが見つかりません|e+(イープラス)

ライブ配信 STREAMING+ にて 11月9日(月)17:00〜
https://eplus.jp/sf/detail/3314020002-P0030001P021001?P1=1221

能って、なんであんなにわかりにくいの?

能がわかりにくいのは、見慣れている演劇と違うから

 能は、私たちが普段テレビで見るドラマと同様に、演劇のひとつに分類されます。その時代に生きる「人」にフォーカスしたストーリーがあり、見る人を楽しい気持ちにさせたり、悲しい気持ちにさせたりする点も一緒です。
 しかし、ドラマとは違う点も多くあります。ドラマでは、登場人物の表情の変化を捉えていますが、能は主人公が能面をつけていて表情がわかりません。セリフは聞き取りづらく、私たちが日常会話で使うような言葉じゃない。音楽はありますが、気分を盛り上げる特殊効果も、舞台セットもありません。なにもかもが真反対です。
 そのため、ドラマは好きでも能については、「何をしているかよくわからない」「なんだか難しそう……」という感想を抱いている方は、きっと多いのではないでしょうか。

声楽と楽器演奏にのせて、ストーリーが展開されていく

 能は、能ならではの作法にしたがって話が進められていきます。
 作法の中でもまず抑えたいのが「謡(うたい)」と「囃子(はやし)」。主には、現代の演劇のセリフにあたる謡という声楽と、音楽や効果音にあたる囃子という楽器演奏にのせて、ストーリーが展開されていくのが特徴です。
 謡にはドレミにあたる音階はなく、合唱のようにハーモニーを形成することもありません。地頭(ぢがしら)と呼ばれる役割の人物がトーンを整え、タイミングをはかり、全体を統制しながら先導します。
 囃子は楽器演奏といえども謡の伴奏をするのではなく、音楽として対等に対峙します。お互いに独立している点が特徴的ですね。囃子に使われる楽器は、笛(能管)、小鼓、大鼓(大皮)、太鼓の4種類。これらを「四拍子」と呼び、舞台に合わせてメロディを構築していきます。

能といえば、能面! なんでお面をつけているの?

 そして能の中でも一番に気になるのが、演者の能面。「演劇なのに、なんで表情を隠すようなお面をつけているの?」と思った方は、きっと少なくないはず。こちらは「面(おもて)」とも呼ばれ、「シテ方」と呼ばれる主役を演じる役者や、シテ方を補助する役者がつけています。
 実はこの能面、その起源は定かでないのです。元来は、神様や仏様といった宗教的意味をもつ役柄を演じる場合にのみ使用していたとか。人間の役柄を演じる場合にも能面をつけるようになったのは、室町時代中期以降と言われています。
 「お面をつけていたら、表情がわからないよ」と思う方もいるかもしれませんが、この能面があるからこそ、演者は老人や子ども、はたまた神仏を演じることができるのですね。あえて顔の個性や表情を隠すことで、舞台上でのふるまいをより洗練されたものにし、「能ならではの幽玄美」を作り出しているのです。

長い歴史を持ち、世界に認められた能

能の歴史は、シェイクスピアより200年も古い!

 能の歴史はとても古く、今から1300年ほど前に中国から伝えられたモノマネ芸や曲芸が元となっています。現在の形になったのは室町時代頃。観阿弥(かんあみ)と世阿弥(ぜあみ)という天才役者が、それまで猿楽(さるがく)と呼ばれていた能を大きく変えてしまいました。
 この2人、れっきとした親子。父の観阿弥は、それまでにない「曲舞(くせまい)」という音楽を取り入れ、息子の世阿弥は歌と舞を中心にする優美な演劇を創り出しました。この時に能は完成したといわれ、その形は今日に至るまでほぼ変化していません。
 このようにして能は変革を遂げつつ、時の権力者である足利義満や織田信長、豊富秀吉、徳川家康といった武将を虜にしながら、自らの芸術的地位を高めていきました。
 ちなみに世阿弥は、独自の演劇論をまとめた『風姿花伝(ふうしかでん)』を著していますが、これはシェイクスピアが世に出る約200年も前のこと。その歴史の長さがよくわかりますね。

ユネスコ世界文化遺産にも登録され、世界中にファンがいる能だけど……

 明治時代以降、能は海外にも広く紹介されています。海外公演も定着し、平成20年にはユネスコ世界無形文化遺産に登録されました。世界でもっとも古い演劇のひとつである能は、国境を超えてファンを増やし続けているのです。
 しかしその知名度とは裏腹に、日本ではファンが少ないのが現状。世界に誇る日本文化ですが、日本人である我々自身があまり知らないのです。
 その背景には、冒頭で申し上げた「よくわからない」「難しそう」があるのだと思います。同じ演劇と言っても、我々が普段見ているようなドラマや映画、はたまたオペラやミュージカルとも大きく違いますから、わからないという感想を抱くのは、当たり前なのかもしれません。

能の面白さは、ここにある!

受け継がれてきた背景には、「ストーリーの面白さ」がある

 とは言っても、内容が面白くなかったり、あまりに難しかったりしたら、今日まで受け継がれていないかもしれません。国境を越えてファンを作り続けている最大の理由は、「時代を越えて人々の心を惹きつけるストーリーの面白さ」にあるのです。
 能の演目は現在約260曲が伝えられており、それらを大きく分類すると、<神・男・女・狂・鬼>の5つに分けられます。
 <神>は、神が平和や幸福、五穀豊穣を与える話。<男>は武将の亡霊や死者が登場して現世に救いを求める話。<女>では主に恋愛とその苦悩が描かれ、<狂>は人間の狂気が表現されている。<鬼>は、鬼や天狗、龍神などが登場し、壮大な物語が展開されます。
 決して完璧ではない人間が、時に神仏や妖怪と触れ合い、時に人生の荒波に揉まれ、時に恋愛に思い悩む……人生、また人の生き様を、様々な形で表現。現代に生きる私たちにも共通するテーマが、人々の心を惹きつけてやまない理由なのです。

史上初! 観世清和×コシノジュンコ 能とファッションの融合

 能の歴史と魅力をご紹介してきました。しかし、いざ見ようとしても、何から調べればいいかわからないし、友達やを誘って劇場に行くのは少しハードルが高い……。
 そんな方にぜひオススメしたいのが、こちらの公演。

観世清和×コシノジュンコ 能+ファッション “継承される伝統と現代の融合”

「継承される伝統と現代の融合」というテーマのもと、二十六世観世宗家、観世清和氏とジュンココシノのコラボレーション企画が実現しました。

 第一部ではファッションデザイナーのジュンココシノによるファッションショーが能舞台を使って行われます。プロジェクションマッピングなどの最新技術も使われながらも、音は西洋音楽ではなく、能楽の「囃子」が使われ、能楽師がショーの中の演出として登場し「風神雷神」をテーマとした舞を披露し、日本の能を中心とする伝統美を現代的にアレンジした舞台となっています。

 第二部の「紅葉狩」は、平安時代中期の武将である平維茂(たいらのこれもち)の鬼退治を描いたもので、本格的な能の中でも派手で分かりやすい演目です。シテ方は観世流二十六世観世宗家観世清和と本格的な能ですが、装束の一部をファッションデザイナーがデザインするという歴史上初の試みにチャレンジしています。

 本公演はネット上で生配信され、配信では、7つのカメラを使い通常客席からは見ることのできない角度で見ることもできます。また、後日、再編集したものを副音声付きでアップする予定です。難しくお堅いものだと思われている能を、かざらない言葉で解説し、誰もが楽しめるコンテンツとして提供します。
 
 能×ファッションショー×プロジェクションマッピングという目玉尽くしの本公演。
 どんな舞台になるのか、今から楽しみです!


ACT4プレスリリース
http://www.impresario.co.jp/2020/03/30/%e7%90%89%e7%90%83%e6%b5%b7%e7%82%8e%e7%a5%ad%e5%bb%b6%e6%9c%9f%e3%81%ae%e3%81%8a%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%9b/
※日時は変更になる可能性がございます

おわりに

 能は、シンプルながらも奥が深い芸能です。その長い歴史に磨かれてきた分、人々を楽しませる芸術としての完成度は随一だと言えるでしょう。
 かつては時の武将を虜にし、現代では世界中にファンを作り続けている日本の伝統芸能。少しでもみなさまに興味を持っていただけましたら、とても嬉しく思います。
 ぜひご紹介した公演をはじめ、能の舞台をチェックしてみてくださいね!

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